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日志


2008/5/14

葵祭(古典~通し番号何番だっけ?)

5月15日は葵祭。
 
源氏物語にもたびたび登場します。
いつか行きたいと思っているんだけどなぁ。
今年は行こうと思えば可能だけど、
なんか気力体力に余裕がないよ~。
斎王代のお衣装が新調されたので見たいんだけど・・・。
 
源氏物語では、源氏の愛人の六条御息所
正妻の葵の上が車争いをするシーンが有名です。
 
本人達が殴りあったわけではなく、従者同士の諍いですが、
双方の女性の苦しみも理解できますね。
 
車争いの後で、御息所は生霊を出し、
産後間もない葵上を取り殺してしまいます。
それだけが原因じゃないけど、源氏と決別して
斎宮(のちの秋好中宮)について伊勢に下ります。
 
 
 
源氏物語の後半にも葵祭のエピソードがあります。
夕霧が、のちの愛人、藤内侍に
 
「この花の名前はナンだっけ?」ってちょっかいの手紙を出します。
 
あおい=あふひ=逢う日
 
ま、真面目な夕霧はこの時には、何もしないんですけどね。
2006/6/5

平安《大鏡》ワイドショー15(古典96)

タイトルは「大鏡」だけど、
カトゴリは源氏物語なのよね~の巻
 
朧月夜の尚侍 
おぼろつきよのないしのかみ
 
 
源氏物語の女人に「朧月夜の尚侍」が居る。
前回の記事でも書きましたが、
麗景殿の尚侍のモデルになったような女性です。
 
まず、共通点をいくつか挙げてみます。
どちらも権力者の娘で、
叔母と甥の関係の帝に嫁ぐ。
女御としてではなく、尚侍として入内
綏子は兼家の娘で、帝は兼家の孫の三条帝。
右大臣の娘で、帝は右大臣の孫の朱雀帝。
 
源の血筋の公達と密通。
相手は失脚、または左遷。
朧月夜の場合はいうまでもなく
相手は光源氏。
でも子供を産むような大胆なことはしなかったのよね。
 
そんなわけで、人物像が重なります。
どちらも美貌で、男に迫られたら「NO」と言わない、
ややオツムも軽い、自分の意思を押し通すことのない、
グラマーな女性と思われます。
 
いや・・でも嫌いじゃないですよ。
いかにも平安の恋の女性って感じですよね。
 
朧月夜の君は、右大臣の末姫です。
姉の弘徽殿の女御の息子の、朱雀帝に嫁ぎます。
帝の異母弟の光源氏との密通が露見したので
女御ではなく尚侍(秘書長官)として入内します。
 
照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の
     朧月夜に しく(似る)ものぞなき
                  大江千里
 
 
この歌にちなんで彼女は朧月夜と呼ばれています。
入内後も帝の寵愛を受けながら、
源氏との関係もズルズル続けました。
ことが露見し、源氏は須磨へ。
3年で許され都に戻ると、
また源氏に言い寄られるままに関係が・・・。
出家するまでの20年にも及ぶ不倫関係でした。
 
こういう女性って、きっと現代にも居ますよね。
 
2006/1/8

初音 その2(古典71)

この記事と1つ下の記事は、2つ下の記事の続きです。
衣装や人物については2つ下の記事を参照してください。
 
新年の騒がしさが落ち着いた頃
源氏は二条院の東院を訪れました。
ここに住まうのは常陸宮の姫君(末摘花)と
二条の尼君(空蝉)です。
 
末摘花は若盛りを過ぎ、唯一の美点だった美しい黒髪も
かさが減り、白髪が混じります。
鼻の色だけはおとろえずに赤いのですが・・・。
彼女に贈った衣装は、想像通り全く似合っていません。
衣装は素晴らしいのですが、着る人と着こなしのセンスがよろしくない。
彼女は明石の御方と違って、長年の付き合いで狎れてしまって
慎みや恥じらいを失っているのも哀れである。
常陸宮の姫君ということもあり粗略に扱えませんが、
ここまでズレた姫さんは自分以外の誰も面倒を見ないであろうから
生涯庇護してあげなければと、源氏は思います。
 
空蝉の尼はひっそりと勤行三昧の日々を送っています。
青鈍の衣もゆかしく、慕わしい佳人だそうです。
源氏はよりいっそう心惹かれるそうです。
 
ホント、この人って紫式部にえこ贔屓されてるよねぇ。
天邪鬼な私は空蝉さんには感情移入も共感もできません。はい。
 
この方で源氏のお年始のご挨拶はお終いです。
女人が多くいると大変ですね。
 
 
ブログも10日過ぎから完全復活する予定ですので
よろしくお願いいたします。
2006/1/5

初音(古典70)

元旦の朝、源氏は午前中は年賀の挨拶をうけ、
午後からは邸内の女人たちに挨拶に行くため
念入りに身なりを整えました。
 
冬の御殿の明石の上からの年賀の贈り物が届きました。
添えられた文には
 
年月をまつに引かれて経(ふ)る人に
     今日うぐひすの初音きかせよ
 
同じ邸内に住むのに会うことのできない娘への歌です。
源氏は瞼があつくなり、明石姫本人に返事を書かせます。
 
ひき別れ年は経(ふ)れどもうぐひすの 
      すだちし松の根は忘れめや
 
長いことお別れしてもお母様のことは忘れませんわ。
 
源氏は夏の御殿の花散里のもとへ行きました。
男女の契りは絶えてないものの、理解と信頼は並みの夫婦以上です。
 
源氏が贈った衣装は、この女性をさらに地味に見せています。
美しくはない女性ですが、源氏には好ましい女性です。
(衣装については↓の記事参照)
 
その後西の対の玉鬘のもとへ行きました。
源氏が贈った衣装がよく似合う、花やかな美人である。
玉鬘は源氏には実の父のようにはうちとけられず、
また源氏も妖しいときめきをひそかに興じています。
玉鬘にとっては困惑以外の何ものでもありませんが・・・。
 
夜、明石の上のもとを訪れます。
源氏が贈った衣装はよく似合い、
高雅に住みなしている佳人は長年の付き合いでも
馴れ馴れしくならず慎み深い態度です。
 
ちい姫からの便りに古歌が書き散らされていました。
無造作な走り書きでさえぬきんでて上品で美しい筆跡です。
 
めずらしや 花のねぐらに 木(こ)伝ひて
    谷の古巣を 訪(と)へるうぐひす
 
源氏は泊まるつもりはなかったのですが、
ついつい艶な風情に負けて冬の御殿で夜を明かします。
元旦をともに過ごすはずの正妻の紫の上
ないがしろにする行為ですが・・・。
 
 
初音は鶯の初音だけでなく「初寝」にもかかります。
 
男心は・・・新年早々から困ったものですよね・・・。
 
 
 
2006/1/1

新春の晴れ着(古典69)

皆様、明けましておめでとうございます。
新春第1回の記事は、お正月らしくいこうと思っています。
 
「源氏物語」の記事って男性にとっては退屈なものでしょうが、
今回のはさらに退屈な記事です。
でも女性にとっては興味深いものだと思います。
 
玉鬘の章の終わりの方で、
源氏が六条院、二条東院に住まう女人たちに贈る
新春の晴れ着を選ぶシーンがあります。
 
「つれなくて人の御かたちおしはからむの御心」
 
紫の上は、源氏が選ぶ衣装によって他の女人の器量を想像します。
この時、女人たちはまだ対面していません。
源氏が選んだ衣装は女人たちの個性に合って、とても面白いです。
紫式部はこういうファッションセンスもいいんですね。
 
 紫の上に選んだ衣装は 
・紅梅の模様がはっきり浮いた葡萄染め(えびぞめ・赤紫)
の小桂(こうちき)
・濃い緋色の桂(下に重ねる着物)
 
あでやかで最新のトレンドで、女盛りの美しさの極まれりの
紫の上でしか着こなせない衣装です。
 
 
明石姫(明石の御方の娘、紫の上の養女)
・桜重ね(表が白、裏が赤)の細長
(細長とは裾の脇を縫いとめていない幼女が着る着物)
・薄紅の桂
 
8歳の幼い姫には愛らしく似合います。
 
 
花散里    
・薄い藍色に波や貝、松などの模様の小桂に
濃い紅の絹を添えて(桂の仕立てる)
 
上品ですが、少し地味すぎる傾向です。
控えめな人柄の花散里にはピッタリです。
 
 
 
玉鬘
・鮮やかな赤い桂
・山吹重ね(表が赤っぽい黄、裏が黄)の細長(明石姫と同じ形式)
この時点では玉鬘は裳儀(女の子の成人式)を迎えていない。
 
母親の夕顔はなよなよした美女ですが、
父親の内大臣(頭の中将・直房)ゆずりの
ハッキリした顔立ちの美女の玉鬘には似合います。
 
源氏は九州で育った玉鬘のセンスを多少侮っているので、
絹ではなく仕立てた衣装を贈ります。
 
 
 
 
 
末摘花
・柳と唐草を織った優美でなまめかしい衣装。
 
本人には絶対に似合わないだろうと、源氏は1人笑ってしまう。
ま、この人物はオワライ担当ですから。
 
 
 
空蝉(二条の尼)
・青鈍(あおにび)の織物にくちなし(黄)の絹を添えて。
 
いかにも尼らしい地味なもの。
この人物は作者に贔屓されているので、
容貌や衣装はことさらみすぼらしく描かれています。
その上で源氏は「心栄えや人柄が好ましい」と慕っています。
 
 
 
 明石の御方
・梅の折枝や蝶や鳥が織り散らされた唐模様の白い小桂
・濃い紫の絹
 
紫の上が思うには、最も高貴で洗練された高雅な衣装。
これを着こなすことができる女性とはさぞや・・・!
心中おだやかではありません。
 
明石の御方については2つくらい↓の記事をご覧ください。
この人物には大変な思い入れがあるので、
本当は時間をかけて丁寧な記事にしたかったのです。
でも、お正月のこの記事には明石の御方が重要なので
慌てて書いた、不備だらけの記事になってしまいました。
 
****
古典で衣装のことをつらつらと描かれている場面ほど
退屈なものはありません。
でも、この場面は例外で、どの衣装もその人物の個性をとらえています。
殿方には退屈であることは変わりありませんが、
女性には興味深いですよね?
 
 
 
リンクが上手く貼れていないようなので↓のトラックバックからご覧ください。
 
2005/12/28

明石の御方(古典68)

明石の上とは、明石入道の娘で
源氏が須磨に落ちたときに縁を結んだ女性です。
父親が受領という出自の低さゆえに、明石の御方
格を落として呼ばれています。
とはいえ、元をたどれば血筋は尊い佳人です。
 
鄙びた田舎の姫とはいえ、気品や教養の高さは
京の女性には劣りません。
源氏は彼女をみて六条御息所を思い出しました。
 
前世の縁の深さからか住吉の神のお導きか
明石の御方に、姫が授かります。
 
源氏は、明石の地のみの縁かと思っていましたが、
母子を京へ呼び寄せます。
夢占いで源氏の子は3人。
帝と妃と太政大臣。
帝は藤壺中宮との不義の子、冷泉帝。
大臣は葵の上の忘れ形見、夕霧。
この姫は妃の位につく運命です。
 
生母が受領の娘では都合が悪いので、紫の上の養女になります。
頭では姫の幸せのためと分かっていても
生木を裂くような母子の別れ。聡明な彼女はひたすらに耐えます。
六条院では冬の御殿を与えられます。
 
明石姫が東宮妃として入内するときに、
紫の上に後見人として指名されます。
 
晴れて東宮妃生母となっても、
明石の上(この時に呼び名は格上げされる)は
常に出自の低さゆえに一歩引いています。
紫の上も明石の上のことは心から信頼します。
 
面と向かって人を褒めたりけなしたりすることのない源氏が
唯一、手放しで褒めた人間です。
「女御の生母として驕った態度に出ず、物事は常に控えめで
何を任せても安心できる」と。 
 
若菜上の宴では、彼女は身分高い女性(紫の上、明石女御、女三の宮)
と同席するにあたり裳を着用しています。
裳とはエプロンのような形状で後にズズ~と引きずるパーツです。
高貴な女性は省略するので、召使の装束である。
 
彼女は出自の低いことを恥じて卑屈になるではなく、
分をわきまえた態度を一貫して通すことで、
自身の高いプライドを維持しました。
 
聡明さとプライドの高さを併せ持つ女性。
私はこの美しく気高い女性は、葵の上に次いで好きです。
若い女性には、特に人気のあるキャラクターなようですね。
 
 
2005/11/5

王朝の宴(古典58)

源氏物語にはたくさんののシーンが出てきます。
 
前回の記事の「藤裏葉」が一番好きな宴ですが、
他にも面白い宴がたくさん出てきます。
現代人と同じで、平安王朝のやんごとない方々も
宴会好きなんですね~。
 
花宴 源氏がハタチくらいのときに朧月夜と出会う宴ですね。
 
初音胡蝶の宴は、
物語的に中だるみになっている時ですので
読み飛ばしてしまいがちです。
緩慢に流れる時間、百花繚乱、豪華絢爛。
この世の極楽のような時は
嵐の前の静けさを暗示していています。
 
 
藤裏葉 夕霧が雲居雁を許される宴(記事57番)
 
若菜下 朱雀院の五十賀の宴。女楽が催される。
      紫の上 和琴 
      明石の方 琵琶
      女三の宮 琴
      玉鬘の子たち 笛
      夕霧 拍子
 
(若菜下の宴もすごく好きなので、いずれ独立した記事にします)
 
紅葉賀や花宴は、宮中行事の宴ですので、
半分は仕事です。
藤裏葉や若菜下の宴のように「管弦の遊び」と称した
プラーベートな宴もたくさんあります。
コトあるごとに「絵合わせ」「歌合わせ」など
宴会をしています。
 
源氏物語には出てきませんが、
私は「花待ちの宴」というのが好きです。
 
桜の蕾を愛でながらの宴会です。
蕾と同じく、若くて身分の低い公達のみが参加します。
身分が低いといっても地下人ではなく、
殿上を許された侍従や少将、中将、衛門督など、
将来、桜が満開になるような出世間違いなしの公達の宴です。
 
ぶっちゃけた話、花が満開になって宴シーズンに入る前に
先に若者だけで楽しんじゃえってコトです。
大納言や大臣たちが来ない宴ですから、心から楽しめます。
 
課長や部長のいない飲み会の方が楽しいってば。
花見といっても酒さえあれば、
満開だろうが蕾だろうがどうでもいいよ。
 
ね?
現代の若者も千年前の若者も同じでしょう? 
 
 
2005/11/4

藤裏葉(古典57)

夕霧が晴れて雲居雁との結婚を許された宴です。
 
 
 
源氏物語に登場する宴のシーンの中で
私が最も好きなエピソードです。
 
亡き大宮の命日の法要での夕霧との対面。
その後、内大臣(直房)もこちらが折れ、
夕霧と和解する良いきっかけがないかと考えていました。
 
庭先の藤は、例年よりも美しく咲き乱れ
管弦の遊びを催すことにしました。
真のもくろみは夕霧を招くこと。
 
今までの経緯やプライドから、正面きって自分から
折れることはできません。
自然に優雅に事を運びたいとの考えです。
 
わが宿の 藤の色濃き たそがれに
    尋ねや来ぬ 春の名残を
 
この伯父からの招待を
どう解釈してよいのか分らない夕霧の返歌
 
なかなかに 折や惑わん 藤の花
     たそがれ時の たどたどしくは
 
夕霧は思いっきりおめかしして
出かけて行きました。
 
内大臣は
春日さす 藤のうら葉の うらとけて
      君し思はば われも頼まん
 
紫に かごとはかけん 藤の花
    まつより過ぎて うれたけれども
 
聡明な夕霧は伯父の真意を理解します。
 
いくかへり 露けき春を すぐしきて 
      花のひもとく 折にあふらん
 
やっとお許しがでましたか。
幾たびつらい春を過ごしてきたことか。
 
夕霧の親友頭の中将(柏木)も妹の結婚を祝福します。
たをやめに 袖にまがへる 藤の花
       見る人からや 色もまさらん
 
親友の柏木は、夕霧を花嫁の新床に導き案内します。
 
内大臣は、自分が折れたのはちょっと悔しいけど、
夕霧ほど立派な婿はいないと満足しています。
他の女性に目のくれず、自分だけを愛している
男性を夫にした雲居雁は、女御の君より
花やかで幸せな新婚生活です。
按察使大納言の北の方になってる母親も
娘の幸せを心から喜んでいます。
 
ま、その後すぐに藤典侍を愛人にしちゃいますけどね。
 
 
 
2005/10/29

夕霧・前半(古典55)

後半の記事56番は↓にあります。

 

前回の雲居雁のダンナさんで

雲居雁についてはコチラ

光源氏と葵の上の息子です。

葵の上についての記事はコチラ

 

父親の源氏に似ず、生真面目で堅物な人間です。

早くに母親を亡くしているせいか、年齢の割に老成した性質です。

 

祖母のもとで共に育った雲居雁と幼い恋を育みます。
しかし、少女を東宮妃にと考えていた内大臣(直房)の
怒りをかい2人は引き離さされてしまいます。
 
夕霧は元服(男の子の成人式)しても
6位という低い位の学生(がくしょう)でした。
父・源氏の親の七光りではなく実力をつけさせるために
との考えです。
 
少女の乳母にまで「花婿が6位の下っ端役人なんて」
侮られます。(6位の服の色は浅葱色
 
くれないの 涙に深き 袖の色の
    あさみどりとや 言ひしをるべき
 
君を思う気持ちの深さは、身分の軽さでは測れないのに・・・・
 
いろいろに 身の憂きほどの 知らるるは
      いかに染めけぬ 中の衣ぞ
 
誰がなんと言おうと、あなたの真実の気持ちは分かっています
 
独り残された少年は涙を流し悲しみます。
祖母が呼んでも寝たふりをして答えません。
 
この時の少年に必要なのは祖母の慰めではありません。
泣きはらした顔を見られたくない男のプライド。
少年は大人の男へと成長していきます。
 
時は流れて・・・・6年後
 
青年は宰相の中将になりました。
雲居雁は今は盛りと、非の打ち所もない
美しい乙女に成長しています。
 
しかし、夕霧との恋愛事件はあまりにも有名で
求婚者は現れません。
もちろん東宮妃というような晴れがましい身ではありません。
(ていうか、恋愛って言っても子供のころの話だし
お嫁にいけないようなコトはしでかしていないと思う)
 
夕霧には降るような縁談があると聞き内大臣は淋しく思います。
しかも、涼しい顔をして、雲居雁に求婚するそぶりも見せません。
(裏で文のやり取りはしていますが)
こんなことなら、夕霧が結婚したがっているときに
認めていればよかった・・・・しかし今さらこちらが折れるのもシャクだ。
 
なんとか2人(内大臣と夕霧)の確執の仲裁を試みた
大宮(夕霧の祖母・内大臣の母)の命日の法要で
2人は言葉を交わします。
 
内大臣はこの慎み深い青年に深い愛情を取り戻します。
自分が娘を東宮妃になどと考えなければ、
夕霧ほど素晴らしい婿はいるのだろうか?
気疲れのする後宮より、素晴らしい公達と結婚するほうが
娘にとって幸せではないだろうか?
 
藤の花をめでながらの管弦の遊びの宴に
夕霧を招待し、雲居雁との結婚を許します。
(藤裏葉の宴は好きなエピソードなのでいずれ記事にします)
 
幼馴染の2人はこの上もないお似合いで
幸せな新婚カップルになりました。
 
後半へ続く↓
 
 
 
 
 

夕霧・後半(古典56)

前半の記事は上↑

この記事は55番の続きです。

 

晴れて恋しい雲居雁と結婚した夕霧

いい婿として幸せに暮らしています。

 

こういう若い頃に遊んでなくて真面目な男って

中年になって本気の浮気があったりするから恐いのよね。

遊びの恋愛の免疫がないから。

夕霧はその典型ですね。

 

藤典侍(とうのないし・惟光の娘)を愛人にしたのだって、

最愛の女性を手に入れたからこっちも、ってことでしょ。

朱雀院が女三の宮の婿を探しているときだって、気持ちは揺れていたし。

人妻の紫の上玉鬘に怪しからぬコトをしでかさなかったのは

父親と違うところですけどね。

 

一番困ったのが、亡き親友・柏木の妻

女二の宮(落葉宮)に恋しちゃったときよね。

理性も分別も吹っ飛んで、なりふり構わず求愛するの。

それがすんごく野暮でドンぐさいやり方なんです。

落葉宮をモノにするまで3年もかかっています。

それも「成り行き」でずるずるとコトを運びました。

 

こういう部分は父親を見習って欲しいですよね。

源氏はこういう状況では、言葉巧みに口説いて

その気がない女もその気にさせて納得させてしまいます。

でも、夕霧のクソ真面目で、ドンぐさくて、風情もなく

要領の悪い部分も、憎めない「可愛げ」のある男なんですよね。

 

妻の雲居雁の立場になると、こんなに引きずらないで

「やるならさっさとやって」白黒はっきりさせて欲しいですよね。

 

 

彼は後に太政大臣になって位人臣を極めます。

はしかのような熱が冷めれば、家庭を大切にする真面目なパパです。

「律儀者の子沢山」というように

正室の雲居雁には長男・次女・三男・五男・六男・四女・五女

愛人の藤典侍には長女・三女・次男・四男・六女を産ませています。

三女と次男は夕霧の養母・花散里が養育しています。

六女は落葉宮の養女として育てられます。

花散里の記事

妻と愛人合わせて12人の子供がいます。

 

落葉宮を妻にしたあとは、雲居雁と

月に15日ずつ通ったと記されています。

(あれ?藤典侍は??)

 

前半の記事と人物像にギャップがありますが

どちらも夕霧です。

 

2005/10/25

雲居雁(古典54)

前回の記事53番の頭の中将・直房の娘です。
源氏と葵の上の息子・夕霧の正妻です。
 
どんな女性?と聞かれると「ごく普通の女の子」としか答えられません。
本当に「普通」の可憐な乙女です。
普通すぎて、源氏物語では異質な女性です。
 
雲居雁(くもいのかり)の母親は直房と離婚して
安擦使大納言(あぜちのだいなごん)と再婚しています。
少女は父方の祖母・大宮さんに育てられています。
大宮は葵の上の母親ですから夕霧にも祖母にあたります。
少年と少女は従兄妹で幼馴染です。
ともに過ごし、淡い恋が生まれます。
 
直房は冷泉帝の中宮争いに敗れ、
雲居雁を東宮妃(皇太子妃)にと考えていました。
しかし、2人の恋が発覚し、このもくろみは崩れました。
(年齢的にたいしたことはしていないはずなんですが・・・)
 
怒った直房は少年と少女を引き離します。
 
 
間は省略して、直房も折れて、2人の結婚を認めました。
(間の出来事は「夕霧」の記事に書きます)
 
雲居雁自身については「可憐な乙女」としか書かれていません。
本当に「普通」の女の子のようです。
夕霧には雲居雁のほかに、1人だけ愛人がいます。
この時代、この身分では異例なほど少ないです。
愛人・藤典侍(とうのないし・惟光の娘)に対して
やきもちを焼きながら、育児に追われるゴク普通の主婦になります。
男心をそそる風情に乏しいけど、夕霧は彼女をかわいく思っています。
 
琴の名手だった祖母・大宮の手ほどきを受けてはいるものの
腕前はたいしたことはありません。
名人になる前に祖母と別れたということもあるけど、
さほど習い事に熱心でもない性格のようです。
 
中年になってからの夕霧と女二宮(落葉宮)との艶聞に
悩む姿は、まるで自分の姿を見ているようです。
私のオットは浮気はしないけど、もしこの状況になったら
私が取りそうな行動そのものです。
拗ねたり、文句を言ったり、手紙を隠したり
(現代なら浮気相手からのメールを消去?)
子供を連れて実家に帰ったり・・・・。
まさに「ごく普通の女性」ですよね。
大騒ぎしたあとは、自分のした事を反省して
うつむいて黙ってしまいます。
私はこういう部分を「かわいいなぁ」と思っています。
 
育児に終われて、額髪を耳の後ろに挟み込んだり
子供に乳を与えたり、世帯じみた場面を描写されている女性は
源氏物語では雲居雁だけです。
 
登場も少なく、目立たないけど本当に
「普通の女の子」なんですよ。
紫式部には「よくぞ、このキャラクターを描いてくれた」といいたいです。
 
 
2005/10/21

直房(古典53)

直房は左大臣の息子で、葵の上の兄です。
                葵の上についての記事はコチラ
 
そして源氏の生涯の親友であり、義兄であり
良きライバルでもあります。
文武・出世競争だけでなく、色恋でもライバルです。
 
源氏物語では重要な人物です。
 
登場したときは「頭の中将(とうのちゅうじょう)」
と呼ばれています。
蔵人の頭(くろうどのとう・帝の秘書長官)を兼任する
近衛中将このえちゅうじょう・護衛官)
将来、間違いなく大臣になるトップエリートです。
帝(この場合桐壺帝)の側近で、采女をいただけるくらいの人物です。
(采女については↓のリンクの「近江の君」の記事に書いてあります)
のちに内大臣になり、太政大臣にまで上りつめます。
 
 
とにかく直房は、なにもかも源氏と張り合っています。
常陸宮姫君(末摘花)源典侍(げんのないしのすけ)まで
張り合ったりしています。   末摘花の記事はコチラ;
末摘花は源氏の愛人になりますが(自発的にではない)
直房もしげしげと文を遣っていました。
姫に興味があるというより、源氏が興味を持つ女性に興味がある
という感じですね。
このあたりはドタバタコメディっぽくなっていますけどね。
 
源氏が失脚し須磨に落ちたとき、右大臣一派を恐れずに
ただ1人須磨に逢いに来てくれました。
それは真の友情の証です。
 
直房さんは、美男で剛毅で家柄も良く
素晴らしい音楽的才能があります。
(この才能は息子の柏木にも受け継がれます)
でも、いま一歩源氏にはかなわないんですよねぇ。
色恋でも官位でもなにもかも、です。
 
若き頃の「青海波」や恋の冒険から
冷泉帝の中宮争いまで、けっこう悔しい思いをしています。
この中宮争いと、夕霧と雲居雁の縁談のこじれと、
権力争いで一時友情は途絶えます。
 
それでも源氏の生涯の親友でライバルであることは変わりません。
 
源氏物語で「男々しい」と形容されるのはこの人だけです。
でも結構女々しいところもあるかも。
夕霧と雲居雁の結婚を自分から折れるのに時間がかかったり・・・。
なかなかねぇ。子供っぽいんですよ。
 
でも、とても人間くさくていいキャラだと思います。
息子・柏木を亡くしたときの悲しみようは、本当に人間らしいです。
源氏は紫の上の死後、彼岸の精神世界へ飛翔して
悟り宗教人になりますが、
直房は生涯、人間くさい俗世の人で終わります。
この方には出家入道と言う言葉は似合いませんけどね。
 
絶対的に直房さんが勝っているのは子供の数。
源氏は3人(冷泉帝、夕霧、明石中宮)に対して
10人以上の子供がいます。
奥さんや愛人の数は似たり寄ったりですけどね。
 
柏木衛門督 (女三の宮と密通を行うのはこの人です)
紅梅少将
藤侍従
弘徽殿女御 (冷泉帝女御・源氏の母をいじめた人とは別人)
雲居雁   (夕霧の妻)雲居雁の記事はコチラ
 
他名前不明なの多数。
男ばかりで女が少ないんです。
だから宮中へ入内させる持ち駒がなくて困っちゃうのよね。
 
リンクのない人名は、まだ記事を書いていません。
そのうち書きますので待っててね。(いい加減だなぁ)
 
頭の中将・直房のほかの関連記事
 
 
 
 
2005/10/18

近江の姫(古典52)

前回、ちょっとだけ触れた「近江の姫」
名前を知られていないんじゃないかな?
「早口姫」と言ったら分るかな?
 
秋好中宮と同年代の女性を思いつくままに挙げたら
偶然ですが3人とも直房の娘でしたね。
今回はとりあえず「近江の姫」
そのうち「直房」と「雲居雁」を書きます。
 
近江の姫も雲居雁もWikipediaでは項目がありませんでした。
やっぱりマイナーなキャクターです。
 
直房さんは、左大臣の息子で、葵の上の兄で源氏の親友です。
 
 
近江の姫の父・直房についてはいずれ書きます。
母親は近江という采女(うねめ)です。  

采女とは、帝(桐壺帝)のお給仕係りの女官のこと。
諸国から朝廷への貢ぎ物として献じられた、
見目麗しい女性のことです。
天皇個人の所有物であると同時に
身分の保証された最高の身分の女官です。
一般貴族の恋の相手ではありません。
彼女たちに手を出すことは、
天皇の財産を盗み出すことになるからです。
 
ただ、例外的に、帝から采女をいただける場合があります。
藤原鎌足は、天智天皇から「安見児(やすみこ)」
という采女を貰っています。
 
 吾はもや 安見児えたり 皆人の 
      得かてにすとふ 安見児えたり
         <万葉集・内大臣藤原卿>
 
近江という采女に恋をしてしまった直房は
桐壺帝から、彼女を貰いうけることが出来ました。
彼は、鎌足さんと同じくらい重要な人物ってことですよね。
 
 
近江は身ごもったまま、田舎に帰ります。
生まれた姫は年頃になって、内大臣家(直房)に
引き取られます。
 
この姫さんは規格外の姫さんです。
宮中で走り回ったり、すごろく遊びをしたり
(深窓の令嬢がくわえタバコでマージャンするような感じ)
すっごい早口で思ったことをポンポンと口に出します。
ちょっと清少納言みたい・・・・。
虫愛ずる姫みたいに個性的で、私は気に入ってるんですけど。
 
 
この姫さんは「これから何かしでかすかな~?」って
思っているうちにいつの間にかフェイドアウトして出てこなくなります。
紫式部も、清少納言タイプの規格外のキャラを作ったはいいけど、
どう扱っていいのか持て余してしまったんじゃないか?
「こんな姫は手に負えない」って感じですね。
 
近江の姫は、夕霧(源氏の息子)にこんな歌を詠みかけます。
女性からアプローチするなんて、この時代では
ありえないことです。
 
おきつ舟 よるべ浪路に ただよはば
 棹さしよらむ とまり教へよ
 
「まだ独身でしたら私はいかが?」って意味です。
 
よるべなみ 風のさわがす 舟人も
     おもわぬかたに 磯づたいせず
 
「せっかくですが、貴女には興味はありません」って意味。
 
このやり取り以降、この姫さんは登場しません。
残念ですね。
 
2005/10/17

秋好中宮(古典51)

久々に源氏物語です。
(常に?)準備不足のため、マイナーな人物で小さい記事が続くかも。
 
秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)って誰やねん!
ってツッコミが聞こえてきそうですね。
 
この方は源氏の妻でも、愛人でも情人でもありません。
 
 
皆さんご存知の六条御息所の娘さんです。
父親は、源氏の父・桐壺帝の弟の亡き前東宮です。
詳しくは上のリンクの記事に書かれています。
 
前斎宮(さきのさいぐう)六条の姫は、母・御息所亡き後は
六条院(源氏)の養女格の扱いになります。
源氏は美しい姫に興味はあるものの、
かつての愛人の遺言を守り父として後見します。
さほど年の変わらない紫の上も母代として、
仲むつまじく後見しています。
 
源氏の兄・朱雀院は、六条の姫を熱望しているのですが、
政治家の源氏は藤壺女院の口ぞえを得て
冷泉帝(藤壺と源氏の不義の皇子)へ入内させます。
入内(じゅだい)=正式な儀式を経て宮中へ参内すること。
つまり帝のお嫁さんになること。
 
母の不運な人生とは打って変わり、
彼女は最強の後見を得て、冷泉帝の中宮(正妻)の地位につきます。
ただし皇子はもうけることができませんでした。
秋が好きな中宮さまなので秋好中宮。
 
この方の性格がイマイチよく分りません。
小柄で美しくて大人しくて怜悧で温厚で篤実で、秋が好き
明石の姫の裳儀の腰結いの役を快く引き受けてくれるいい人です。
裳儀=女の子の成人式
腰結い=介添え人みたいなもの
  
 
田辺聖子さんのパロディ本「春のめざめは紫の巻」には
「お母ちゃんが頑張りすぎますさかい、娘はしおれてしもうた」
と書かれています。そうかもね。
母親が派手すぎて、たとえ中宮の位についても
この姫は目立つことはないかも。
 
源氏物語の中の同年代の女性は、皆さん
新人類といわれるような個性的な意志のある女性です。
この姫だけは、性格に特徴がありません。
玉鬘は現代的で聡明な女性。    玉鬘の記事はコチラ
近江の姫は早口で規格外の姫。
雲居雁は、際立ってとは言えないけど
個性はあります。
 
ダイジェスト版とかには絶対に出てきませんが、
こんな名前の女性がいると覚えてあげてくださいね。
 
Wikipediaで検索しても、「この人名はありません」って出てきたし。
 
 
2005/8/25

春のめざめは紫の巻

田辺聖子さんの「新・私本源氏 春のめざめは紫の巻」
本当にオモロイです。
最近文庫化されたようなので、入手しやすくなりました。
源氏物語を読んだことのある方はぜひ読んでみてください。
笑えること間違いなし!
 
でも、雅な王朝文学以外の源氏は認めない
って人は読まないほうがいいかな。
 
源氏を知り尽くしてる田辺さんだからこそ、
描くことができたパロディ本です。
源氏物語が好きだから、つい描いちゃったんだろうなぁ。
執筆は楽しんでおられたと思われる作品です。
 
天下の美男の源氏の君も家でくつろぐときは
「大めしぐらいの大いびき。寝坊で寝言いい。
それに寝ててオナラもする」んだそうです。
お供の舎人(とねり)には、裏で「うちの大将」と呼ばれています。
 
社交界の女王、六条御息所は、お付女房に裏で
「うちのオバはん」って呼ばれているしね。
源氏が帰ったあとは「あ~疲れた」と言って、
楽な単(ひとえ)に着替えて、かもじ(付け毛)を外して
スッピンになって、ぶぶ漬けのご飯をかっ込むんですよ。
 
やんごとなき方々も大変なんですよね~。
 
このパロディ本に出てくる女人はみんな面白いです。
愚鈍な末摘花も、優等生過ぎる朝顔宮も、
何の感情も自我もなさそうな女三の宮も
原典より魅力的です。
 
こんなオモロイ作品ができたのも、
源氏物語があればこそ、ですよね。
 
かる~く楽しむ読み物として、一度手にとってみてください。
  
 
2005/8/24

末摘花は赤い花(古典32)

皆さんご存知のバタバタコメディっぽい章ですね。
 
恋人の夕顔を亡くした源氏は、気の優しい女性を求めていました。
亡き常陸宮の姫君が、世に忘れられてひっそりと心細くお暮らしなのを知ります。
淋しいお暮らしなので、ひどい人見知りで恥ずかしがりやな姫に
源氏は幻想を抱き、しげしげと文をやります。
 
お返事もなく、声も聞かないまま、若い源氏は強行突破します。
 
暗闇の中の契りのあと、姫の姿を初めて見てビックリ!
 
痩せて骨ばった体、青白い顔、ひどい馬面。
極め付けが普賢菩薩様のお乗物(象)のように長く垂れた鼻。
しかも、赤い。
言葉数が少ないのも大人しいのではなく、
とっさの切り返しが出来ないだけでした・・・・。
どこか、いいところを探さねば・・・・。
ああ、この姫の髪は本当に美しい。
丈なす緑髪といえる素晴らしい黒髪です。
1つでもいいところが見つかって良かったね。
 
あとは性格もいいんですよ。
須磨に落ち消息が途絶えても源氏の言葉を
(馬鹿正直に)信じてずっと待っていました。
時勢に流されて心変わりしない純粋な彼女に源氏は感動します。
 
こんな風変わりな姫でも、身分柄、ないがしろにはできません。
愛情はないけれど、生活面の面倒はみることになりました。
 
常陸宮と桐壺帝の関係はよく分りませんが、末摘花も孫王の身分かな?
じゃあ、源氏の従姉?どちらにしても血縁ですね。
 
宮さまって、身分が高いから出世欲がなく、貯蓄も下手なんですよ。
また世間知らずなので、財産を騙し取られてしまうこともしばしばあります。
父に先立たれ、残された姫は、哀れなくらい零落して
身分卑しい受領(地方官)の妻に成り下がることも多くあります。
 
末摘花は、身分高い源氏の愛人の1人なら世間体も良く
経済的にも援助を受けられるのでラッキーでしたよね。
生涯、源氏の庇護を受けて生活します。
彼女は年をとると馴れ馴れしくなり、行動はいつもトンマで
源氏のお荷物扱いされています。
 
紫式部は美しくないモノには情け容赦なく嘲笑しています。
そんなことを気にしていたら王朝文学は読めません。気にしない。気にしない。
 
赤い鼻から、ベニバナの別名「末摘花」と命名されましたが・・・・。
黄色い花じゃん!
2005/8/23

朝顔宮(古典31)

朝顔宮は源氏の女人に入れていいものか・・・?
風流な歌のやりとりだけで、肉体を伴う関係が一切ありません。
朝顔宮こそ「ヤらせずに男の闘争心をかきたてる手口ナンバー1」ですね。
空蝉なんてまだまだ序の口です。
 
 
朝顔宮式部卿宮の姫君です。
式部卿は桐壺帝の弟ですから源氏の従姉弟にあたります。
年は源氏より1つ2つ上かな。
賀茂の斎院を勤める、身分高い女性です。
普通は内親王が勤めるので、
孫王の身分で任命されることは稀なことです。
 
美しく聡明で高貴で神秘的な女性です。
経済的にも恵まれ、世間にも重く扱われ尊敬されています。
また、行動も重々しく慎重です。
 
父宮は、朝顔宮と源氏の縁組を望んでいます。
源氏もまた美しい高貴な姫に恋心を抱いています。
六条御息所のように浮名を流してしまうこと、
葵の上のように苦しむこと。
祭りでの車争を見た彼女は、
2人の女性の二の轍を踏むまいと固く決心します。
 
朝顔宮は源氏の魅力も十分に分っており、
好ましく思っているので、情緒ある文のやり取りが続きます。
恋とも友情ともつかない形での、生涯のパートナーです。
 
ご存知のように、源氏はなびかない女性にこそ
燃えるタイプなので、熱心に文を送ります。
 
と、こんな感じの女性ですね。
優等生すぎて、私には魅力不足のように思えます。
源氏のヒロインって言ったらやっぱ、
愛欲の煉獄に身を焼いてこそ、ですよね。
文ひとつにしても高貴で完璧すぎて、私はこの女性の
体温や息遣いがあまり感じられません。
 
万葉集の朝顔は、現代の「桔梗」だそうです。
源氏物語の朝顔は、皆さんご存知の朝顔です。
 
 
2005/8/3

玉鬘・源氏物語の女人(古典29)

源氏物語の中で、玉鬘(たまかずら)ほど
現代にも共感される女性は他にいないと思います。
最も聡明な女性と言っても相違ないでしょう。
 
彼女の母は五条の女、夕顔です。父親は頭の中将・直房
夕顔は頭の中将直房の愛人でしたが、源氏も通い始めます。
そして女の物の怪に取り殺されてしまいます。
 
夕顔の記事
 
4歳で母親が行方不明になった藤原瑠璃姫
(ジャパネスクの主人公と同じ名前よね)
乳母に連れられて九州へ下ります。
 
父親の内大臣(直房)に会うために京に上った瑠璃姫は
紫の上の女房(侍女)・ 右近(元は夕顔の侍女)に出会い
六条院(源氏の住まい)に引き取られます。
太政大臣・源氏の娘、玉鬘として
世の公達の憧れの的となります。
 
源氏の前に現れた玉鬘は二十歳ばかりの匂いたつ美しき乙女です。
日陰で育ったにも関わらず、鄙びたところはなく、
聡明で温かい人柄の女性です。
また、男の言いなりになってたやすく手折られるような弱さはありません。
大人の源氏とも対等に応酬できます。
この頃の源氏は「賢く手ごたえのある女性」がお好みです。
 
また源氏も夕顔の忘れ形見に父親としてではなく
怪しからぬ心を持ちます。
闇夜に揺らめく篝火のような煩悩です。
 
彼女に求婚している公達は
内大臣の子息・柏木中将(玉鬘とは異母兄妹)、
兵部卿宮、髭黒右大将。
 
父親が内大臣だと判った後は、異母弟だと思っていた
夕霧(源氏と葵の上の息子)までも求愛します。
冷泉帝からも女御として望まれ、源氏も思いを寄せています。
内大臣の姫、源氏の養女の婿として誰一人として不釣合いな身分ではありません。
 
どの公達の愛を受け入れても立場は苦しくなります。
帝には異母姉・弘徴殿女御や源氏の後見する
秋好中宮(六条御息所の姫)が。
六条院には紫の上や花散る里、明石の上が。
右大将の北の方は紫の上の異母姉です。
 
尚侍(ないしのかみ・帝の秘書長官) として宮中に
上がることが決まりますが、玉鬘が誰のものになるのかは
なぞのまま「藤袴」の章は終わります。
尚侍は帝の愛人になる場合が多いのですが、公の役職で
女御として、帝の寵を争うという立場ではありません。
朧月夜も尚侍という役職です。
 
夕霧は藤袴の花を御簾のうちに差し入れ玉鬘に求愛したことから
この章は「藤袴」と名づけられています。
 
藤袴の画像
 
 
次の「真木柱」では玉鬘はすでに右大将の妻になっています。
なにが起こったのかは触れられていませんが、
玉鬘が望んだ結婚ではないようです。
誰もが悔しい思いをしている中で有頂天なのは婿の右大将のみです。
 
その後、尚侍として形ばかりは宮中に出仕して、右大将邸に引き取られます。
 
は自分の力ではどうすることも出来ない運命の翻弄され続けます。
五条の家から九州へ、京へ上って六条院へ、そして宮中から右大将邸へ・・・。
本人が望まないのに境遇が二転三転するなかで自分を見失うことなく
振る舞いはいつも聡明で鮮やかです。
 
言い寄ってくる源氏には恥をかかせることなく、やんわりとかわし、
自分が望んで右大将を引き込んだのではないと態度でハッキリ示し、
その上で周りに祝福されて屋敷へ向かえられます。
権門の北の方として堂々と家政を取り仕切り、女として大輪の花を咲かせます。
 
後に源氏には養女として、夫と共に孝行をします。
 
玉鬘は「いまめかしい」「いままさりする」と形容されています。
「現代的美女」といったところでしょうか。
 
玉鬘の母・夕顔は、なよなよとした頼りない女ですが、
彼女は地に足をつけ、自分の力で運命を切り開ける強さ
持っています。
かと言って運命に逆らい破滅するような愚かな真似はしません。
 
現代の感覚で見ても、新しい時代の
素晴らしい女性ではないでしょうか?
 
2005/8/1

源氏紙風船(古典28)

田辺聖子さんの源氏物語の解説書です。
↓の記事の幼稚園ママさんの疑問に答えてくれる内容でもあります。
 
源氏物語の原点を、現代語訳(というより私訳)として
小説化する際に感じたことや考えを綴っています。
 
源氏が紫の上に他の女人の話をすることが
紫の上には悲しすぎるということですが・・・。
 
 
紫の上に隠し事をしないことで、源氏は
彼女に最愛の女性という地位を与えています
 
源氏は紫の上にこう言います。
「あまたの女人がいるけれど、他の女人の話題を
出せるのはあなたの前だけだよ。
あなたにだけは、私の本心を話すことができる。
2人の間には隠し事は何もない。
私たちは一心同体だ。
あなたが最愛の女性である。
あなたがいればこそ、他の女人にも興味がでるんだよ。
あなたがいるからこそ生きていける」
 
というような感じですね。
 
怜悧な紫の上はその言葉が真実だと感じます。
また源氏の最愛の女性が自分であることも疑いません。
 
しかし、女が欲しい愛の言葉
源氏が与えた、彼が最上と思われる愛の言葉
「あなたを一番愛してる」ではなくて
「あなただけを愛してる」なのです。
 
紫の上は源氏と一心同体といえるくらい添っています。
言葉は必要ないくらい、心と心は密着しています。
が、最後の最後で、どうしても理解し合えない部分があります。
ただ1点、それが最も大切な部分なのです。
 
紫式部は「男と女は永遠に分かり合えない」ということを
書きかったのではないでしょうか?
 
源氏物語の原典では、いつも言葉や説明が不足しています。
書き手が劣っているのではなく「平安文学」の形態です。
現代小説を読みなれた読者のために「埋める作業」を加えたのが
田辺聖子の「新・源氏物語」なのです。
 
田辺聖子の最大の「埋める作業」は「玉鬘」です。
流れがすごく自然だったでしょう?
原典には書かれていない部分を、かなり創作・書き足しされています。
原典では「藤袴」の終わりでは玉鬘は誰の妻になるのか?というところで終わります。
「真木柱」の冒頭ですでに右大将の妻になっています。
あまりの唐突さに読者は戸惑いますが、田辺源氏では足りない部分埋めて
現代小説として自然な流れに仕上げられています。
源氏紙風船の記事
2005/7/22

源氏の情人たち(古典27)

夕顔の女房(侍女)右近が二条邸に引き取られたことを
書いたのは、玉鬘 を取り上げるときに重要な人物だからです。
彼女は源氏の情人というわけではありません。
物語には2人に男女関係があるとも、ないとも書かれていませんが、
私は潔白だと思っています。状況証拠だけですが。
 
当時の貴族は自邸に仕える女房(侍女)を思い人にする場合が
多くあります。源氏とて例外ではありません。
(でも基本は高貴な姫君が好みなです。
女房風情に手を出すほど女に困ってはいないですよ)
 
葵の上の女房(侍女)中納言の君を情人にしていましたが、
妻の死後、舅、姑に会いに左大臣邸に泊まっても
中納言と夜を共にすることはありませんでした。
 
二条邸の女房、中将の君、中務(なかつかさ)の君も情人ですが、
須磨に落ちる際に紫の上 の託します。(右近も託される)
中将、中務紫の上の人柄に傾倒して、朝顔宮との艶聞や、
女三の宮の降嫁の際に紫の上以上に心を痛めます。
 
紫の上付きの女房 にも何人か情人にしている者がいますが、
彼女が病に臥してから一切近づけることはなくなりました。
 
ちょっと言葉が悪いのですが、よく働く、
目をかけている女房(侍女)にご褒美的な感じで
情をかけているようにも取れます。
もちろん多少の愛情があることが前提です。
 
女房の方も女主のために、体をはって夫を
主の邸に引き止める手段だったと取れます。
もちろん、こちらも愛情があることが前提です。
 
女主が亡くなれば情人とは夜を共にしなくなります。
亡き人を偲ぶ話相手 になりますが。
情人たちは「つれない仕打ち」とは思うものの
源氏の悲しみを思えば「もっともだ」と納得します。
 
右近を二条邸に迎えた最大の理由は口封じです。
源氏は好色家というイメージですが、それ以上に政治家です。
敵対する右大臣家に付け入られる噂を広められるわけにはいきません。
夕顔の死を知る唯一の証人を自分の手中に留める必要があります。
そして、亡き人を偲ぶことを出来る唯一の話相手です。
また、主を亡くした右近には行くべき場所もなくなりました。
 
もちろん右近の魅力を感じていれば情人にすることは
可能ですが、夕顔 の死に打ちひしがれていた源氏
そこまで手が回らなかったと思います。
 
右近も体をはって守り立てるべき主はすでにいません。
源氏に魅力を感じていればせまることも出来ますが、
同じく主の死に打ちひしがれていましたし。
 
六条院に移ったころには右近は中年の古参女房になり、
源氏に意見できる数少ない人間だったと思います。
のちに玉鬘の筆頭女房になります。
この2人には男女の情愛より共犯者という言葉が似合います。